文責：太田健二
取材日：2020年4月25日(土)（メッセンジャーを使ったインタビュー調査）
レコード／CDショップの困難
新型コロナウイルス感染拡大のなか、実店舗型のレコード／CDショップも苦境にあえいでいる。大阪では、Fastcut Recordsの南堀江店が、当初予定していた2020年4月26日(日)の閉店を繰り上げ、緊急事態宣言が発出された4月7日(火)の営業をもって閉店。心斎橋のCaspal Recordsは、4月8日(水)にこのまま閉店することを発表した。1990年オープンの老舗Time Bomb Recordsも4月8日(水)から「（タイムボムの）緊急事態宣言 & #STAYHOME 応援セール！」を「血行」している。
インタビューイのX氏は、レコード／CDのウェブ・ショップ（以前は実店舗型だった）を経営している。
X：店舗で経営していた当時は輸入レコードの新譜・新品をメインに扱っていたのですが、現在は、中古盤を扱う業務形態に変わっております。こちらの方も最初の頃は国内のみの販売でしたが、Discogsを利用するようになって、海外のバイヤーさんからのオーダーが殆どの状況です。
※「Discogs」とは、音楽に関するデータベースのサイトであり、マーケットプレイスで商品売買が可能。
ウェブ・ショップのようなEコマース（電子商取引）は、外出の自粛が要請される状況においても、売上を維持もしくは増加する傾向が指摘されるが、新型コロナウイルス感染初期段階の4月上旬までは、X氏のウェブ・ショップも好調だったという。
X：輸入盤をメインにしていた頃は、スピード重視の為、フェデックスや日通さんなどを利用してました。今は小さい荷物がメインなので、郵便局からの郵送を利用しております。
しかし、国際的な新型コロナウィルス感染拡大の影響が物流にも及んでいく。2020年4月2日(木)から、イタリア、スペイン、スイス、ベルギー、ギリシャ、ロシア、ブラジルなど一部の国・地域宛て国際郵便の一時引受停止となり、X氏のウェブ・ショップもイタリアからの大口オーダーがキャンセルとなってしまう。さらに4月10日(金)からスウェーデン、ノルウェー、デンマークなど北欧やオーストラリアも、4月24日(金)からアメリカ合衆国も国際郵便停止となる。
参考）日本郵便「新型コロナウイルス感染症の世界的まん延による国際郵便物の一時引受停止国・地域」（2020年4月24日現在）
X：なので、現在の荷物の輸出規制は大変なダメージです。扱っているジャンルがロック中心なので、オーダーの殆どが欧米からで、アメリカが6~7割位を占めていました。今のところは（売上は）2割減くらいかと思いますが、昨日からのアメリカ（との国際郵便）停止で、来月は7, 8割位減少しそうです。
このように、レコード／CDのウェブ・ショップですら、新型コロナウイルス感染拡大のなかでダメージを被っていることがわかる。
クラブイベントとDJの困難
X氏はDJとしても活動しており、定期的に開催されるレギュラーイベントに関しても、話を伺うことができた。X氏が関わるイベントで、最も早い時期に中止を決定したものが3月9日(月)のイベントだった。「イベント中止の判断は主催者側」だったという。開催場所だったクラブのイベント営業は4月9日(木)から休業となるが、それまではイベントごとに対応は異なった。
X氏が関わる他のイベントは、3月21日(土)や22(日)に開催しているが、「お客さんの入りはかなり厳しかった」という。
X：店の売り上げの事を考えると、開催してあげたかったのですが、感染が拡大するにつれて開催する事が厳しくなっていきました。
その後、4月4日(土)、19日の(日)イベントが中止となった。リアルなイベントが開催できなくなって、X氏たちはオンラインでライブ配信も考えたという。
X：〇〇の主催者がオンラインでライブDJ配信を考えたのですが、著作権の問題で断念して、とりあえずSpotifyでリストを公開しました。△△でもリレー方式で配信を提案したメンバーがいたのですが、ウチにターンテーブルの機材が無いのでこちらも断念しました。ウチも今は一台しかターンテーブルを使ってないので。
参考）水口瑛介「DJプレイを適法にする著作権の権利制限規定」論座-朝日新聞社の言論サイト
このように、DJのオンライン配信には著作権の問題だけでなく、音響機材や通信設備の問題もある。そういった理由からSpotifyで（アナログ、フィジカル派なので、初めて使って）プレイリストを公開したそうだ。
DJにとってイベントは、経済的な収入を支える生業というよりも同好のコミュニティが集う場の側面が強い。最後にX氏は次のように締めくくった。
X：コロナが落ち着いたら一刻も早くイベントを開催したいです！！出来ると信じております。
