売上予想比10割減が半数以上 〜音楽講師の危機的状況〜

文章:小林篤茂

音楽講師を対象とした、COVID-19(新型コロナウイルス)の影響に関する調査アンケートの集計結果を公表する。
アンケートは4月10日から17日までインターネットで回答を募集し、有効回答数は63件であった。
調査に参加していただいた方にはこの場を借りて感謝を表したい。今回はデータを公表するにとどまるが、今後は詳細な分析を行い順次公表していく予定である。

◯回答者の年齢
・20代 57.1% (36名)
・30代 14.3% (9名)
・40代 23.8% (15名)
・50代 3.2% (2名)
・60代 1.6% (1名)

◯回答者の性別
・女性 76.2% (48名)
・男性 28.3% (15名)

◯回答者の雇用形態

・正社員 4.8% (3名)
・契約社員 4.8% (3名)
・フリーランス・個人事業主 90.5% (57名)

◯回答者の主たる就業場所(複数回答)

・東京都 33件
・埼玉県 11件
・神奈川県 9件
・千葉県 8件
・大分県 4件
・愛知県 3件
・広島県 2件
・北海道 1件
・群馬県 1件
・京都府 1件
・奈良県 1件
・大阪府 1件
・福岡県 1件

◯兼業、副業をしている方の職種

オーケストラ事務局/学校音楽の非常勤講師/高等学校の幼児教育・保育コースの非常勤講師(ピアノ)/伴奏ピアニスト/アルバイト/ブライダルプレイヤー/イベント演奏/挙式演奏/作編曲/鍵盤奏者/演奏者/大学非常勤講師(音楽以外)/コンサルタント/フルタイム事務員(契約社員)/ 家事手伝い/演奏活動/演奏家/ボーカリストとして学校などで公演/中学高校の非常勤講師/部活動指導員/サポートミュージシャン/レコーディングミュージシャン/バンド活動/ユニット演奏/サポートミュージシャン/アンサンブルピアニスト/ブライダルピアニスト/キーボーディスト/オーケストラでの客演/エンジニア/楽譜出版社/オーケストラ裏方/合唱団の伴奏など

◯自粛要請などの結果、3月分のレッスンについて、どのくらい影響を受けましたか。

・影響はなかった 11.1% (7名)
・決まっていたレッスンが少し(1~3割ほど)なくなった 17.5% (11名)
・決まっていたレッスンが半分ほど(4~6割ほど)がなくなった 7.9% (5名)
・決まっていたレッスンがほとんど(7~9割)なくなった 15.9% (10名)
・決まっていたレッスンが全てなくなった 46% (29名)
・その他 1.6% (1名)

◯自粛要請などの結果、4月分のレッスンについて、どのくらい影響を受けましたか。

・影響はなかった 4.8% (3名)
・決まっていたレッスンが少し(1~3割ほど)なくなった 1.6% (1名)
・決まっていたレッスンが半分ほど(4~6割ほど)がなくなった 6.3% (4名)
・決まっていたレッスンがほとんど(7~9割)なくなった 15.9% (10名)
・決まっていたレッスンが全てなくなった 71.4% (45名)

◯自粛要請などの結果、5月以降のレッスンについて、どのくらい影響がありそうですか。(見込み)

・影響はなさそう 9.5% (6名)
・レッスンが少し(1~3割ほど)なくなりそう 15.9% (10名)
・レッスンが半分ほど(4~6割ほど)がなくなりそう 14.3% (9名)
・レッスンがほとんど(7~9割)なくなりなりそう 22.2% (14名)
・全てのレッスンがなくなりそう 22.2% (14名)
・まだ未定・わからない 14.3% (9名)
・現状では5月7日以降再開の予定 1.6% (1名)

◯3月のレッスンキャンセルに伴う減収はありましたか。

減収はなかった 19% (12名)
売上予想比で1割減収となった 6.3% (4名)
売上予想比で2割減収となった 1.6% (1名)
売上予想比で3割減収となった 14.3% (9名)
売上予想比で4割減収となった 3.2% (2名)
売上予想比で5割減収となった 3.2% (2名)
売上予想比で6割減収となった 1.6% (1名)
売上予想比で7割減収となった 7.9% (5名)
売上予想比で8割減収となった 7.9% (5名)
売上予想比で9割減収となった 3.2% (2名)
売上予想比で10割減収となった 30.2% (19名)
その他(見舞い金が支払われた) 1.6% (1名)

◯4月のレッスンキャンセルに伴う減収は、予測でどの程度ですか。

減収はなさそう 9.5% (6名)
売上予想比で1割減収となりそう 1.6% (1名)
売上予想比で2割減収となりそう 3.2% (2名)
売上予想比で3割減収となりそう 1.6% (1名)
売上予想比で4割減収となりそう 1.6% (1名)
売上予想比で5割減収となりそう 6.3% (4名)
売上予想比で6割減収となりそう 1.6% (1名)
売上予想比で7割減収となりそう 4.8% (3名)
売上予想比で8割減収となりそう 9.5% (6名)
売上予想比で9割減収となりそう 6.3% (4名)
売上予想比で10割減収となりそう 52.4% (33名)
まだ未定・わからない 1.6% (1名)

◯5月のレッスンキャンセルに伴う減収は、予測でどの程度ですか。

減収はなさそう 17.5% (11名)
売上予想比で1割減収となりそう 4.8% (3名)
売上予想比で2割減収となりそう 3.2% (2名)
売上予想比で3割減収となりそう 3.2% (2名)
売上予想比で4割減収となりそう 3.2% (2名)
売上予想比で5割減収となりそう 7.9% (5名)
売上予想比で6割減収となりそう 1.6% (1名)
売上予想比で7割減収となりそう 6.3% (4名)
売上予想比で8割減収となりそう 9.5% (6名)
売上予想比で9割減収となりそう 9.5% (6名)
売上予想比で10割減収となりそう 22.6% (13名)
まだ未定・わからない 12.3% (8名)

◯レッスンがキャンセルになったことによる、保証などはありましたか。

キャンセル分の全額が保証された 7.9% (5名)
キャンセル分の一部が保証された 17.5% (11名)
キャンセル分は保証されなかった 66.7% (42名)
その他、自由回答
12月の報酬の20%のお見舞い金が支払われた。5月以降に補講の繰り越しを現在検討中。お月謝の2割は保証されるときいてます。休会費を頂いたが、全体の1割未満。

◯現在のあなたの経済状況の深刻度を10段階で評価してください。「この状況がいつ収束するかわからない」ということを踏まえて、現在の経済状況が今後もしばらく続くものとしてご回答ください。

1 (深刻な状況ではない) 6.3% (4名)
2 0% (0名)
3 4.8% (3名)
4 1.6% (1名)
5 12.7% (8名)
6 4.8% (3名)
7 11.1% (11名)
8 15.9% (10名)
9 14.3% (9名)
10(深刻な状況にある) 28.6% (18名)

◯【自由回答】上記の質問で、その深刻度を選んだ理由をお聞かせください。
※コメントがあった回答のみ記載。

深刻度10
演奏仕事、レッスンは全て0。
オンラインレッスンに切り替えたものの、環境が整わないなどの理由により生徒の希望がなく、レッスンがゼロになってしまった。家に楽器がない生徒もしばしば見られ、オンラインでは対応しきれないのが現状。音楽教室ではレッスンはゼロ、勤め先の学校の始業も5月以降となり、4月の収入が断たれた。
・博士課程に在籍しており、自身の収入から学費を負担しているため、勉強を続けられなくなる恐れがある。
・単純に収入がゼロになったので。
・レッスンが主体だった為、収入は2ヶ月0になった。演奏の仕事も自粛の為すべて中止になり、月収50万以上だったのが0になった。
・個人でリトミック教室をやっています。スタジオを借りて教室をやっている為、スタジオ代を払わなければいけないが、レッスン全てキャンセルにしたので、収入が0なのに、スタジオ代を払わなければいけなくて困っています。
・教室が臨時休業になりレッスンは無し、収入はゼロになった。
・5月から再開予定だが、3密の中レッスンを行うので、休講が延びないか不安
・3月までは、来ない生徒はいたが音楽教室は稼働していたためいつもの6割ほどの月収はあったが、4月から音楽教室も自粛になりコンサートも全てキャンセルになったため収入は0になる。
・月収20%の見舞金では生活できません。
・学校が自粛になりましたので、学校関係のレッスンが全て0になりました。
・レッスンが全てキャンセルになり収入は0になった。休講の連絡や今後の予定の個別連絡に対しての手当てもなく、手弁当状態でした。

深刻度9
・夫がいるので、生活全てが深刻までにはならないのかもしれませんが、子供もいて休校な為出費も多く、進学もあり物入りな時にとても困るのは確かです。オンラインレッスンなどできればいいのですが、相手が環境がなかったり、そこにも基準がないので、やるまでには悩みます。発表会などの本番も全部流れて、伴奏の練習はしていても、ノーギャラでその時間もちゃらになり労力だけです。
・生徒さんへのフォローなども自分たちの携帯代が増えるだけの人も沢山いるようです。
楽器店などにもフォローしてもらえなかったり、3密なのにこっそりレッスンしたりするとこもあり、基準のない生活にうんざりします。
・収入は無いが、実家のため家賃などの生活費は緊急性心配はない。ただ、一人暮らしの準備をしていたところで大打撃。一人暮らしは無期限延期になった。
・全ての仕事がキャンセルになり、収入が0。
・某音楽教室講師のため、勝手にオンラインレッスンに切り替えられず、レッスンは全て休講、講師は自宅待機のまま2月末からなにも状況は変わっていない。収入はゼロのまま。

深刻度8
・オンラインレッスンを導入する予定だが、生徒側の環境の問題がある。また、コロナ禍でレッスン受講に対しモチベーションダウンによる休講もあるため、5月以降も収入は少ないままだと思う。
・貯金を切り崩して生活をしている
・学校の吹奏楽部レッスンが0になった。
・音楽教室の収入は0、自宅は半減、しかし子供の塾代はオンライン授業になってもそのまま。もしこれが来月、再来月と続くと精神的にもきついです。
音楽の仕事ができないため、音楽に関係ないアルバイトのシフトを増やせるには増やせるので8番にしました。
・しばらくレッスン再開出来ない=収入0。
・レッスンもライブサポートも全てなくなり5月以降も半分以上キャンセルの状況。

深刻度7
・音楽での収入がなくなったが、アルバイトの収入で多少はまかなえそう。
・オンラインレッスンで多少確保できそうだが、年間でスケジュールが決まる演奏の仕事がなくなりそう。
・レッスンのお仕事しかしてないので、影響ありました。
・オンラインで出来ないこともあり、レッスンの数も減っているので、大幅に減収する
レッスン業務は無いが制作や別の仕事に多少切り替えられそう。
・オンラインレッスンに切り替えたので多少の影響しか受けていないが、オンラインレッスンをする為の経費がかかった。

深刻度6
・5月からレッスンが再開できれば貯金を切り崩すことにはなるが問題ない。
・自粛要請によって生徒の家庭の動揺が大きく休む人が増えると思う。
・貯金があるため

深刻度5
・扶養されているため。
・教室は生徒様からの月謝は、コロナ理由でレッスンを行っていなくても、引き落としで受領している。しかし、講師にはレッスンを行った分のみの支給とする、とのことで、給与が支払われない。フルタイムで事務員として勤務しているので、教室からの給与が9割減ったところで、イコール収入も1割というわけではないが、すでに音楽教室分も収入として見込んで生活、支払い予定をたてているため、当然生活は厳しくなる。
・まだ一月分の減収なので、なんとかなっている
・主人の給料があるため

深刻度4
・収入が4割減だから。

深刻度3
・収入を得る手段をいくつか用意しているので、致命傷は避けられている。今のところ。
・実家暮らしのため、今は家族の収入で生活に支障は出ていない。しかし、家族の仕事にも影響が出てくると今後自体は悪化すると思う。

深刻度1
家事手伝いの仕事は休みなくしていたので、収入は0ではなく影響はない。

◯国や自治体が実施する個人事業主への現金給付制度をご存じですか?

・はい 71.4% (45名)
・いいえ 15.9% (10名)
・個人事業主ではない 12.7% (8名)

◯上記の質問で「はい」とお答えた方にお尋ねします。活用は考えていますか?(有効回答数45件)

・はい 35.6% (16名)
・いいえ 28.9% (13名)
・検討中 35.6% (16名)

◯上記の質問で「いいえ」とお答えた方にお尋ねします。理由を教えてください
(有効回答数13件)

・制度の対象外 92.3% (12名)
・制度が複雑 7.7% (1名)

◯【自由回答】現在や今後の状況を踏まえ、いま望む補償や助成金について、自由に記述してください。

・なるべく早くの支給を。
・最低限10万の支給が欲しい。
・とにかく今国の出している案は、既婚者で夫の仕事がある人にはあまり関係ないとおもうし、普段生活保護レベルの人がモデルなのは、おかしいと思う。
1番は他の国のように、全ての国民に10万とか、衣食住の平均額考えてを支給してほしい。 一人暮らしの人は本当に、大変だと思う。 現金支給がないなら、車の税金など税金を今年免除とかにしてほしい。
・自粛期間一ヶ月につき15万円の現金給付があれば、最低限の生活は守れそう。
・とにかく早く現金支給してくれる制度が今すぐ必要。回りでは生き死を考えてる人間もいる。冗談ではない。
・人を選ぶのはではなく、一律に支給して欲しい。
・現金支給は大変助かるが、3ヶ月分にしかならない。国民年金の猶予特例をつくる、カード会社の支払い猶予特例をつくるなどがあればかなり救われる。
・業務委託契約者が給付金対象になるかどうか、いまいちわかりにくいことと、実際の給付までにかなりの労力と日数がかかりそうな不安があります。また給付対象を「世帯」とされると家族と同居している人は30万円給付金対象外になってしまいます。給付対象を世帯から個人に変更していただきたいです。
・本人は高齢なためこれまでのたくわえをあてにする
・1ヶ月以上先の支給ではなく、今必要な人が周りに沢山いる。スピーディーに対応して欲しい。
・個人事業主は、企業に勤める方以上に経済的に打撃を受けていると思います。 無利子での貸付などではなく、せめて売り上げの7割支給など、補償がほしいです。
・クレジットカードの引き落としを先延ばしにしてほしい
・今の政府の言い方だと2〜6月の5ヶ月分で30万円が1回だけもらえるという認識だが。それだけででは家賃の半分にしかならない。極めて生活が厳しい。
・25万円
・家賃が払えなくなってしまうため、家賃分くらいの補償は必要と思ってます
・答える気力が今ありません。
・補償の内容というより、手続きの簡素化と迅速化を期待したいです。また、対象なのに審査員通らない人や事業者も多いようで、条件の緩和もされてほしいなと。
・自営業、フリーランスは政府の一律10万支給では生活できない。 家族がいれば貰える金額は増えるが、一人暮らしはどうなるのか。 以前の収入減少者30万支給のハードルを低くしてわかりやすく対応してほしい。
・最低限七万円の支給がないと生活が持たない。
・世帯収入で考えるのではなく、個人の収入の目減りも補償してほしい。
・減額の証明などが困難
・教室が休業になった分の補償が欲しい。
・補助があれば1万円でも助かる。

【自由回答】最後の質問です。状況が続く中で「こんなサービスがあったら、普段とは違う形で仕事ができる」というものがあれば自由にご記入ください。思いつくままで結構です。

・不本意だがオンラインレッスンをするしかないかなと考えている。
・配信がしやすい、マネタイズしやすいプラットフォームができるとやりやすい。
・オンラインレッスンがあったらいいなと
・サービスというよりは、音楽を生業とする人たちのための支援団体があったらなと思います。音楽関係の団体こそたくさんありますが、資金援助やそういったことができる業界団体が皆無、というのがこの先つらいですね。音楽専門の金融、ファイナンス事業者も海外にはあったりしますが、日本の音楽業界は致命的なほどお金の分野に弱い気がします。 配信系のサービスとしてはもうすでにさまざまなものがあるので、どちらかというとそういったものをコネクトする(複数の配信プラットフォームを一元的に管理できたり、ドネーションや売り上げも一括管理できるような中間サービス)ようなサービスがあるといいなと思います。自動化や簡略化できるところはして、クリエイティブでない作業はできるだけ合理化したいと思う今日この頃です。
オンラインレッスンの存在をもっと沢山の人に知ってもらいたい。

・Wi-Fi制限なし、オンラインレッスン検討中
・もともと、音楽業界の仕事自体不安定で、大手音楽教室が、発表会など沢山の講師の拘束時間にみあった報酬もなく、利益をとっていてなりたっていないのが問題にならないのも不思議だと思っています。 今回のようなことも、線引きがあいまいで、広がりを防ぐのは難しいとおもいます。 吹く楽器や弾く楽器は接触をさけられず、歌わない音楽教育はレッスンにはならないのではとおもいます。 色々と勝手をいいましたが、同じおもいの人が沢山います。どうか声が届きますように。
?音楽教室で稼働しています。今回の件で改めて 立場の弱さ、そして生活の危うさを痛感しています。学校が休校になると音楽教室のレッスンも全て休講になる昨今。 グループレッスンは 三密そのものであり、レッスン再開出来るのか先行き不安です。
・このようなアンケートを行っていただけるだけでも、フリーで音楽の仕事をしている人や音楽講師の現状をわかってもらえる機会になるのでありがたいです! ありがとうございます!
・某音楽教室ですが、休んでも半期の内にレッスン消化しなければならない。講師にのみ金銭、感染対策などを丸投げの状態
・一年くらいはこの状況が続くと思っているので、色々気長に捉えていこうと思います。
・このような状況だからこそ、音楽の力を広めたいと思うが…どのようにすれば良いかわからない。 大手音楽教室は一部オンラインレッスンを認めるべきだと思う。 アンケート、ありがとうございました。
・はやくおさまることを願う。持病(肺炎)の悪化が心配。

音楽講師の逼迫した状況が明らかとなった。
特に4月の売上予想比が10割減という回答が半数以上であることから、事態が相当深刻であることがうかがえる。
今回はアンケートのデータを掲載するにとどまったが、今後は自由回答についての分析や、傾向についての分析を行う予定である。
音楽講師の雇用形態や、置かれた立場などについて、さまざまな問題が複雑に絡み合っていることも浮き彫りとなった。

改めて、調査に参加していただいた方にはこの場を借りて感謝を表したい。