文責:椿巳莉乃(東京藝術大学)
取材日:2020年4月13日(月)
アソビシステム株式会社の代表取締役社長である中川悠介氏は、世界に日本発のポップカルチャー「カワイイ文化」を更新し続ける街、原宿から発信されるコンテンツを中心に、マネジメントやイベント制作、その他多方面で活動しているプロデューサーである。エンターテイメント・カルチャーを牽引する中川氏は、新型コロナウィルスの影響をどのように捉え、パンデミックに対してどのように向き合っているのか。現状と今後の展望について聞いた。
◾まずはじめに、現状で新型コロナウィルスの影響で困っている事や、それに伴う変化などがあればお聞かせください。
中川:2月末以降、まずLIVEやイベントが中止になり、時間をおいて3月20日過ぎから雑誌の撮影、テレビの収録が無くなってきています。4月に入るとアパレルの撮影も無くなってきて、いよいよ稼働を伴うものは無くなっています。
◾自粛要請などの結果、3、4、5月分の仕事の数はどのくらい影響を受けましたか?
中川:3月は3割減、4月は8割減、5月は現状なにも分からない状況です。結構まずい状況ですね。
◾3月、4月に予定されていたライブやイベントが、中止または延期になってしまった数はどのくらいありますか? また現状での今後の見通しなどもあればお聞かせください。
中川:所属の子や細かいものも全部入れると、3月、4月ともに100本近いと思います。
現状、ライブやイベントの延期や振替をいつからなら可能なのか明確に分からないので出しづらいです。5月のイベント、また6月にしても実際開催できるのか? アーティストによっては、秋からのツアーがある場合、延期もできない状況です。
◾それは厳しい状況ですね…。この減収への対策などは何か立てていますか?
中川:クラウドファンディング、音楽ストリーミングサイトなどは好調ですので、そこへの強化は考えています。一つ事例としては、所属の子たちのフリーマケットをBASEで開催したりもしています。
◾次に、これまでに一緒にお仕事された事のあるライブハウスやクラブハウスの、コロナによる経営難など、何かお話を聞いていますか?
中川:弊社の場合はクラブが多いので、クラブのみなさんは、「いつから再開できるのか? またここまでニュースで報道されると、再開出来たとしてもお客さんが来ないのではではないか?」など悩んでいます。
◾現在ライブハウスやクラブハウスなど閉店せざるを得ない店舗がどんどん増えている状況ですよね。御社の発足にはクラブイベントと深い関わりがあると思うのですが、今の状況をどのように感じ、どのように見ているのでしょうか? また、都の休業要請先と「感染拡大防止協力金」の交付が正式に発表されましたが、その事についても何かあればお聞かせください。
中川:とても残念ですが、閉業の判断をしなければならない人も出てくると思います。もともとインバウンドを意識していた店舗は特にだと思います。外国人が日本に遊びに来るというのはかなり先のことのように思えます。
協力金については、本来はお店の規模に合わせて考えるべきなのではと思っています。
◾そうですよね…。ライブハウスやクラブに対しての社会的なバッシングも見られますが、その事についてはどのように考えていますか?
中川:エンターテイメントは必ず必要であると思っていますが、今の状況化では難しいことも分かります。しかし、必ず必要なものなのでバッシングされるのは辛いです。
◾過去のインタビュー記事を拝見させていただいて、「人と体験」、「ライブ」というものをとても大事にされているのが印象的でした。また、マイクロコミュニティについても大切にされていて、今回の新型コロナウィルスの影響では、その辺りの事業にとって苦しい状況が続いてしまうかと思いますが、それを支援するようなプロジェクトやコンテンツの展開を現状で何か考えている、または行っていたりするのでしょうか?
中川:はい。今いくつか新規のプロジェクトを準備しています。
◾そうなんですね。楽しみです! 最後になりますが、音楽産業を守っていくために、今後どのような支援やプロジェクトが増えて欲しいと思っていますか? また、この度の新型コロナウィルスでの様々な影響を通して、何かメッセージがあればお聞かせください。
中川:まずはコロナを落ち着かせる事だとは思いますが、産業としての価値をきちんと認めてもらえる状況を作りたいです。日本にとって必要な産業である事を。
色々な意味で、「価値の再認識」のタイミングなのかなと思っています。働き方、自分の時間の過ごし方。様々な事をしっかり考えるタイミングだと思います。その中での、物事の価値の再構築。
僕たちエンターテイメントは、必ず価値のあるものだと思っています。アフターコロナ、そこで何を発信出来るかが大切な気がしています。
◾どうもありがとうございました。
※インタビューはメールに対する返信という形で行われた。