コロナウイルス状況下における、
WEB音楽メディア編集者の役割と姿
信太卓実(Real Sound 音楽編集部)
インタビュー

文責:紺野 泰洋
取材日:2020年5月2日(土)

5月22日に東京都は、「新型コロナウイルス感染症を乗り越えるためのロードマップ」を発表した。しかしながら、このロードマップにおいても「ライブハウス」に対して休業の緩和措置の詳細は明示されることはなかった。記事公開の現時点においても、あくまで東京都に限定ではあるがライブハウスの営業規制緩和は検討状態にある。

そのように、まだ明確な出口を見通すことができないこのコロナウイルス状況下において、音楽に携わる人びとの声やそこで生まれ出る音楽の姿を様々な「音楽メディア」が拾い上げながら、自らの「業界」が置かれた状態を俯瞰しつつ、何とか多くの人びとへ伝えようとしている。

今回、話を聞いた信太卓実氏(以下、敬称略)は、音楽雑誌『MUSICA』編集部を経て、現在はWEB メディア『Real Sound』音楽編集部に所属している。本年1月の入社直後に訪れたコロナウイルス感染症拡大の中、自らの仕事や、周囲の人びとと共同しながらどのように音楽について情報の発信を試みているのか。今回は非常事態宣言発令後、リモート・ワークの場となった信太の自室から、Zoomを通じオンラインで話を聞いた。

 


自身の仕事について

■:今日は突然のご連絡にもかかわらずありがとうございます。もう、現在はリモート・ワークがメインですか?

信太卓実(以下、信太):そう、完全にリモートです。緊急事態宣言が出てからなので、もう1か月近く経ちましたね。

■:編集部も誰も会社へは出てない感じなんですか?

信太:やむを得ない取材の時だけ会社に行ったりとかぐらいですかね。でも、できる限り五人以上会社にいないように努めていて、出社しなきゃいけない時でもちょっと時間をずらしたりとかしてる感じです。自分は一回も行ってないんですけど。本当疎遠になりましたよ、会社と(笑)。

■:(笑)。通常だと、どのようなお仕事がメインになるんですか?

信太:基本的には、インタビューの編集と企画出しですね。それに付帯してあとは営業活動と自分で記事を書く、取材をするっていう感じです。まあ、編集が圧倒的に多いかなとは思います。記事については、インタビュー系は出稿記事がメインですけど、それ以外の記事は編集部で、毎週企画立ててガンガン出稿関係なくやっていくっていう感じなので、出稿記事と企画記事というのは半々くらいの気持ちではいますね。

■:なるほど。現状はそのインタビュー仕事もすべてZoom、オンラインに切り替わっているというか。

信太:そうですね、ほぼほぼ。でも、たまに対面でやりたいっていう方がいるので、そういうときはソーシャルディスタンス保って、換気もしっかり行いながらやることもありますけどね。

■:それでは、現在と以前でインタビューの数の増減についてはいかがでしょうか。

信太:減ってますね。やっぱり、ガクッと減りました。でも、ウチは出稿でインタビューやる場合とレビューを作る場合、両パターンあるんです。それだったら「出稿するから、本人稼働なしでレビューだけでお願いします」みたいなパターンになることがかなり増えましたね。PRレビューなので、ある程度どういうテーマで書くかも先方とやりとりしながら作っていくという感じが増えた気がします、いつもより。

周囲の状況について

■:信太さんは編集というお仕事上、関わるのはライターさん以外にもレーベルの人だったり、カメラマンだったりとたくさんの方とかかわると思います。

信太:そうですね。レーベル、カメラマン、ライターが主にかかわる方ですね。こういう状況になってみて、レーベルの方とは企画について相談することも多いですし、ライターにはこちら側からコロナ関係の企画とかも結構立てて、執筆を相談したりしてます。でも例えば、こういう記事書いてくださいってお願いをすれば、ライターとお仕事をすることはできるんですけど、やっぱりカメラマンは取材がないと、こちらからも仕事を提案してあげられないっていうのが現状ですね。本当に現場がないとカメラマンは大変だなと思ってます。もう三月ぐらいから、皆さん大変じゃないかなと思いますね。

自分も3月後半ぐらいに、あるカメラマンの方に撮影依頼した時、「今日が今月初めての仕事だ」って言ってたくらいなので。ライブ・カメラマンだと特に影響が顕著ですよね。完全にライブ写真しか撮らないカメラマンの方もやっぱいるので。ライブのスケジュールでみっちり詰まってた仕事が全部飛んでしまったという。

■:信太さんのお仕事自体はいかがでしょうか。

信太:ありがたいことにですけど、仕事量は減ってないですね。現状、インタビューとかライブ・レポートとかが載せられない分、やっぱり記事数を補填しなきゃいけないので、その分企画を考える時間を相対的に増やしている感じです。編集仕事としては、いくらでも記事アイデア自体はあるし、取材もオンラインでやろうと思えばできるので、やりよう次第ですかね。

コロナウイルス状況下でのWEB音楽メディアについて

■:Real Soundでもコロナ関係の記事も出していくなどは企画されているのでしょうか。

信太:2月末にライブの中止・延期が拡大してからは、ほぼ毎日コロナ関係の記事を出すようにはしていて。例えば、最初のころは配信ライブ自体が珍しかったと思うので、配信ライブをするバンドの特集記事は作っていました。そこから今は、海外のオンライン・フェスに注目した記事を作ろうとか、「会いに行けるアイドル」の文化はこれからどうなっていくんだとかを考察したりとか、レーベル関係者に話を聞いたり、支援プロジェクトを取りまとめている方に話を聞いたりとか。そういう記事自体はどんどんあがるようになってきていますね。もちろんそれと並行して通常のリリース・プロモーション、インタビューとかも載せている感じです。

多分これからも新しいコロナ関係の企画は、しっかりやっていく方針です。今までは細々と、記事を上げていくっていう感じだったんですけど、大きな特集としてもっと中長期的な音楽、エンタメの行く先を見通せるような記事作りをしていきたいという意思は編集部内でもあります。今音楽編集部には自分を含めて8人が所属しているんですけど、編集部内では毎日のようにオンライン会議をしてますね。社内での連携は結構大事にしているかもしれないです。

■:なるほど。編集部内でもこの状況下で、出すべき記事を見定めながら新たな仕事を生み出していく努力を日々続けている状況なのですね。

信太:今、Real SoundではSpotifyでのPodcast配信の試みとかもやっているんです。今月からそのチームに自分が入ったのですが、普段なら収録は同じスタジオに皆で入ってやったりしてたんですけど、今はもちろんそれはできないので、こうやってZoomとかでリモート収録できるのか?音質はどうなのか?みたいなチェックとかを今やってる状態ですね。

『TALK LIKE BEATS presented by Real Sound』

■:信太さんも出演されたりとか?

信太:自分が出ることはたぶんないです(笑)。裏方業務で携わってる感じですね。MCはライターのimdkmさんと姫乃たまさん。その二人はMC固定で、そこにゲストが来るっていう感じの番組ですね。そのゲストに誰を呼ぶかとか、どういうトークテーマでやるかとか、あとはスケジュール調整とかそういうところは自分がやっていく感じになりそうで。

■:三原勇希さんと田中宗一郎さんのSpotify Podcastも昨年始まってから、徐々にリスナーを増やしている感じはありますし、Podcastの実施母数自体が増えてきてますよね。現在の情勢も含めて、新しいコンテンツ作りを進めていた部分もあるのでしょうか?

信太:もともとYouTubeにもReal Soundは注力しようとしていて、今がちょうど動画やPodcastコンテンツを充実させていこうっていう時期だったんですね。年明けぐらいは、YouTubeチャンネルにあがってる動画もそこまで多くなかったし、Podcastももちろんまだ始まってなかったんですけど、自分が今年の初めに入社したタイミングでちょうどそういうのを強化していこうっていう感じになっていて。結果的にコロナウイルスの影響が広がってリモート・ワークや、家で過ごす時間が多くなっている中で、もちろん企画を進めることは大変ですけど、視聴してくれる人は増えたのかな、なんていう感じはしてます。

インタビュー記事も今までは文字面で読むっていうのがメインだと思うんですけど。せっかくのWEB媒体なので、動画でインタビューを見せてもいいし、Podcastでインタビューしてもいいし。それはインタビューする相手のキャラクターによって分けてもいいじゃないかっていうのがあって。文字で見せるのが向いている人もいるし、動画や音声で話した方が向いている人もいるという風に使い分けていいんじゃないっていう発想は面白いかもと思ってます。

実は番組はtofubeatsさんがゲストの初回が三月に始まったばかりで、まだ一回しかやってないんです。第二回をやろうと思ってたら、緊急事態宣言が出ちゃってなかなか収録場所が見つからない、じゃあリモートでやりますかみたいな状態になって今調整中って感じですね。現状、YouTubeもPodcastもコンテンツが発展途上なので、そこを充実させていかなきゃっていうことで、色々あくせくしながら今は仕事をしている感じです。

 


信太卓実
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